(頒布終了しました)風景印に関する資料集頒布のお知らせ

※頒布終了しました。お申し込みくださった皆様ありがとうございました。(20230123)
これはただの同人誌に過ぎないのですが、風景印の図案解説文を集めた資料集をboothで頒布していますので、こちらでもお知らせします。→商品ページ
昨年11月に発行したもので、年末まではTwitterのサークル内で情報を出し、そちら経由で(一部については個人間のやり取りで)頒布していました。
もう暫くboothに置いておきますので、もしもご興味がありましたらどうぞ。
以下、仕様の説明が続きます。(Twitterに掲載したものと大まかには同じ内容です)
…………………………
3年ぐらい前から自分用&納本用に作っていた資料集を印刷したので、ざっと内容について説明します。基本的に私しか楽しくない本ですが、万一ご入用の方がいらっしゃいましたらどうぞ。
これは風景印に関する資料集で、郵政が使用開始時に発表した風景印の解説文を局ごと・使用順にまとめたものです。対象は1948~2020年。ソースは主に昔郵政が発行していた「風景入通信日付印集」という書籍と、その刊行停止後~2004年頃までは速報紙「郵趣ウィークリー」「切手(2006年廃刊)」、以降はJPのウェブサイト等です。数は11672局・13886種。内訳は以下の通りです。
風景入通信日付印集(7561)
郵趣ウィークリー紙(5380)
切手紙(21)
JPウェブサイト(860)
他の書籍(9)
局返信・局配布資料(55)
局名改称や県名付加・削除を除外し、あくまでも図案そのものの変化に従って収集・配列しました。現在郵趣関係の出版社が発行している風景印カタログの解説文は改変が大きく誤りも多いため、「元はどういう文章だったのか」を知るために制作したものです。
主な情報は、局名、読み仮名、各解説文とその使用開始日・資料名、局の郵便番号、局番号。その下に私の個人的な覚書(背景グレー部分)があります。覚書の内容は、指定文化財等の名称、行事の実施日、テキスト内の誤記の訂正、その他題材の特定に必要な諸情報。要は私個人のネタ帳です。
ページ見開きの見本です。個人的な興味による偏りはありますが、題材の所在地等はまあまあ調査しています(不明箇所もあります)。過去の私のTwitter上での発言や、このブログで書いてきた内容を簡潔に詰めた感じです。

各局の記載内容の見本です。平成の大合併前の市町村単位で局を配列している点が特徴で、地域毎の特色が把握しやすくなっています。旧町村名の隣は合併日です。

旧町村名は行事や文化財の検索に有用で、たとえば鶴岡市のような、多数の町村が合併しているけど住所からすぐに旧町村名が分からない地域で題材の特定が楽になります。
例として、山添局(旧櫛引町)に描かれている「総覆輪三十二間筋兜」が知りたい。そのまま検索すると致道博物館所蔵の兜が先に出てくるんですが、これは旧鶴岡市なので別物です。ここで描かれているのは旧櫛引町の文化財だった「伝加藤清正公兜」で、町史で写真と解説を見ることができます。著名な人物に関連した題材であり、データベース内に単語を入れておけば利用可能性が広がります。

↓この局は郵頼の返信も面白かったのですが(ここでも清正の件が説明されてますね)、

以前は(おそらく山添局が黒川地区の集配を担当していたため)黒川能が描かれていたが、無集配局になり題材がそぐわなくなったため変更した、という意味のことが書かれています。
風景印の題材変更の理由で多いのは局の移転や題材の消滅ですが、こういうケースもあって、必ずしも景観等の変化を反映していない。そして、集配局と無集配局では題材の選び方にも違いがある。集配局の風景印は担当地区の名物を(局所在地からは離れていても)入れて作るが、無集配局ではそうではない。そんなことが分かったりします。
このようなことは、収集を続けていると何となく体感で分かるようになってきます。無集配局の風景印に描かれる題材は、大きく「その市町村(または数局を内包する程度の比較的広い地域)を代表する名物」と「その局のごく周辺の名物」に分けることができる。「局周辺の名物」に十分面白いものがあればそれだけで作ることもあるが、地域内の一斉配備などで統一感を出したい時や、単純に題材が足りない時は「市町村(広域)を代表する名物」を取り入れて仕上げることもある。さらに一斉配備で手抜きをしたい時は「市町村(広域)を代表する名物」のモチーフを使い回して似たような図案を量産し、収集家には概して不評となります(東京都豊島区、神奈川県川崎市、大阪市阿倍野区、兵庫県尼崎市など)。
↓これは千葉県市川市内の風景印ですが、外枠の梨が「市を代表する名物」で、その中に描かれているのがそれぞれ「局周辺の名物」です(市木の「松」や著名な「法華経寺五重塔」「花火大会」など、数局で共有しているモチーフもあります)。

市販のカタログを読んでいると、たとえば市川若宮局について、↓こんな記述がある。

市販のカタログでは「市川七夕祭り」が描かれているとありますが、検索してもそのような行事は出てきません(市川市では、茂原や平塚のような市町村規模の七夕まつりは行われていません)。また、そのような知識がなくとも、ここで描かれているのは局周辺の行事のはずなので、市町村規模の行事が市の中心部から離れた1局だけで描かれているのは不自然ではないか、と見当がつくわけです。
↓で、調べてみると、この図案の解説文は、使用開始時の発表では「若宮の七夕まつり」でした。

カタログの図案解説者に知識がないために安易な書き換えを行ったのだと思いますが、「若宮の七夕まつり」はかつて実在した若宮地区の祭りで、郷土関係の書籍では写真なども見ることができます。以前市川市立図書館のレファレンスで紹介していただいた書籍が、その後レファレンス協同データベースに掲載されていました。→こちら
私はこんな感じの調査を断続的に10年ぐらいやっているのですが、一応そこで分かったことは記載し、分からなかったこと(これもたくさんあるのですが)も一通り挙げることができたと思います。風景印の書籍なのに図版が殆どないという変わった本ですが、代わりに市販の書籍にない情報がいろいろ入っている本です。
改変前の解説文を読んでいると結構気づきが多いのですが、たとえばこんな例もあります(これは以前このブログでも書いたことがあります)。鳩ヶ谷局(埼玉県)。↓はカタログ画像。

対して、元の解説文はこうでした。

市販の書籍では「クスノキ」としか書かれていないものが、本来の解説文では「市の天然記念物のクスノキ」であった。つまり、クスノキは単に市のシンボルなどとして描かれたわけではなく、特定の巨木を指している。実際に実物を見ることが可能なわけです。こういうケースがたくさんあるので、元の解説文を読むだけでも色々な発見があるかと思います。
本来このような情報は、pc上でデータベースとして利用しないと十分効果を発揮できないのですが、色々あって紙書籍になってしまったので、いくつか購入特典をつけることにしました。以下の3点で、boothから購入後にダウンロードできます。
1)座標データ集
見つけにくい石碑などを中心に、書籍内に座標(Googleマップ表示用)を記載しているのですが、紙だと面倒なので、そのデータだけ抽出してCSVファイルにしています。全336件。(これ以外の題材の多くは、主要なランドマークからの道順などを本文に記載しています)
2)行事データ集
風景印に登場する民俗行事やイベントなどの名称・実施日を書籍内に記載していますが、その部分を抽出してCSVファイルにしたものです。全1874件。
局名や所在地(市町村)等の情報をつけているので、風景印に関連した行事に合わせて訪問・郵頼したい時に役立つかと思います。
3)2021〜2022年の改廃情報
書籍に入っているのは2020年末までの情報なので、それ以降にJPウェブサイトで更新された情報をまとめました。全396件。内容は、ページ番号、開始・廃止の区分、局番号、局名、局名読み、図版のアドレス、開始・廃止日、解説文、図案者、局住所と合併前の旧自治体名です。
目次の見本です。

A4 398p、うち本体(データ部分)が303p。他に、全体的な解説が31p(テキスト16p、図表15p)あります。
表紙はタイトルのみですが、代わりに押印可能な紙にしました。押印スペースのようなものがあります。

絵葉書(複製)がおまけについています。写真の撮影者は生出匡氏で、この人は国立公園切手「十和田」に使われた写真の提供者なのですが、おそらく、この切手と同時に作られた奥瀬局・焼山局の風景印の制作時に参考にされた写真がこれじゃないかと思います(よく似ています)。写真面に押印可能です。

かなり特殊な本で、基本的に一般向けではないのですが、既に風景印のカタログを持っていて、ここまでの話を聞いて楽しめそうならどうぞ…という感じです。
繰り返しますが、これはただの同人誌に過ぎません。いかにもそれっぽいことを色々書いていますが、全て私の超個人的なメモに過ぎないので、ご理解いただいた上でお迎え願います。情報は間違っている可能性、変化している可能性(特に文化財・行事関係)が常にあります。発行してから気づいたミスは正誤表その他に書きましたが、今後もまた出てくると思います。ある程度数がたまったらまたまとめたいと思います。
以上です。よろしくお願いします。
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